デメ研AWARD2014
2014年度、デメ研関係者の中から、素晴らしい活動をされた方を、橘川の独断で選んで顕彰いたします。
最優秀賞
◇谷川洋さん
今年で設立10年目のAEFA(アジア教育友好協会)を運営する谷川さんたちは、この10年間でアジア各地に、なんと191の学校を建設しました。箱を作っただけではなく、きめ細かな運営サポートを行い、今年はその学校の卒業生10人を、師範学校に送り見事に先生として、自分たちの学校に赴任させました。191の学校は、すべて日本各地の小中学校と姉妹校の関係を結び、子どもたち同士の交流も促進しています。
デメ研は、今後、10年間の計画で、AEFAの活動を出来る限り支援していきます。現在、活動記録と、世の中に対するアピールを書籍化するためのクラウドファンディングを実施しています。
ラオスから京都動物園に贈られてきた象さんのお礼に、京都の子どもたちの力によってラオスに学校を作る活動も開始しました。それぞれの地域、それぞれの人が出来ることを探りながら、大きな流れにつなげていきたいと思います。
優秀賞
◇和気優さん
和気さんは、学芸大学の駅前で、眼光するどく「農民カフェ」のビラまきをしていて、そのビラを僕が受け取って知り合いました。ロックンロールバンド「ジャクナイフ」のボーカルだったり、千葉で農業をやりながら、下北沢でカフェをやったり、全国の少年院にギターかついでバイクで巡りながら、少年院の子どもたちに魂のメッセージを伝えてきました。少年院から、和気さんのところに届いた手紙は、10年間で3000通になります。
その和気さんが、いよいよ本格的に、農と魂のネットワーク事業を推進します。「AOZORA PROJECT」です。。これは、ひと駅にひとつのフェアートレードマーケットを作ろうという動きです。和気さんは長年、下北沢マルシェを運営していて、来年の4月26日(日)には、目黒区碑文谷の円融寺境内で、「オーガニックマーケット AOZORA in 碑文谷」を実施します。碑文谷はデメ研の地元でもあり、参加します。京都や高島平で実施した「未来フェス」は、「AOZORA PROJECT」の動きと合流していきます。
来年の飛躍に期待します。
◇浅田一憲さん
浅田さんは、アスキーからスタートし、ISDN ターミナルアダプタ「MN128」やISDNルータ「MN128-SOHO」の開発を行い、35歳の時に企業したオープンループは数年で上場した。その後、経営から退き、北大の医学部でバイオテクノロジーを研究し、慶応大学で奥出直人さんからメディアデザインを学ぶ。
浅田さんの慶応大学の卒業制作が「色のめがね」である。色覚異常などが原因で、色が見えにくい、色を見分けにくい人のための色覚補助ツールのアプリを開発し、無料で公開した。「色のめがね」は、スマートデバイスのカメラとスクリーンを使用し、科学的な理論に基づいた手法により、見えにくい色の一部をリアルタイムに見えやすい色に変更した上で、オリジナル画像と交互に表示することによって、色をわかりやすくします。全世界の色覚異常で悩む人達の圧倒的な支持を得て、ダウンロードが行われています。
なお、浅田さんは、高校生時代にロッキングオンの読者で、現在、橘川が主宰している「深呼吸歌人」としても、日々、深呼吸する言葉を綴っています。来年の更なる発展と深化を期待します。
◇桃原祥文さん
本年、長崎県大村市が運営するbjリーグ(プロ・バスケットボールチーム)の「長崎スポーツタウンマネジメント株式会社」の代表取締役に就任しました。チーム名は「アストライズ長崎」です。桃原さんとは、彼が10数年前に、福岡の麻生グループに所属していた時からの仲間であり、子どもスポーツ教室のリーフラスの活動を一緒に支えてきました。
地域型のプロスポーツクラブは、有名クラブでない限り、少ない予算の中で、細々と活動を続けています。桃原さんの開発したモデルは、地域のプロスポーツクラブの選手が、地域の子どもたちのスポーツ教室を開設し、その収益で、選手の生活経費を確保しようとするものです。更に、地域の子どもたちが生徒になれば、先生である選手が試合に出れば、家族総出で応援に来るという集客効果も期待出来ます。
桃原さんは、障害者スポーツの安定化を人生のテーマにしています。「アストライズ長崎」のGMも、車椅子バスケで、スペイン、ドイツでのプロリーグで実績をあげてきた堀江航くんが就任し、車椅子バスケのリーグも模索しています。健常者の参加を含めた車椅子バスケの模索です。
リーフラスとも連携していきます。現在、リーフラス、全国で、38000人の子どもたちの会員がスポーツを楽しんでいます。「スポーツタウンマネージメント」という、桃原さんのコンセプトが、来年からは、大きく広がっていくと思います。
2014年1月1日
橘川幸夫
住まいの近くに「林試の森」という公園がある。ここは明治時代に政府の林業試験場として作られたもので、その機能は現在は筑波学園都市に移転されて、跡地が都市公園として整備された。早朝、散歩することが日課になった。元々が林業試験場なので、世界中の樹木が集まっていて不思議な雰囲気がある。大きな楠の木があって、はじめて見た時に、なぜかとても懐かしく思われ、勝手に自分の「マザーツリー」として時々、樹皮に手を触れる。マザツリーとは、世界中のどこかに、自分だけの母なる樹木があるという説のことである。
20メートルはあろうかと思われる大木が、この森には多数ある。20メートルはあっても、100メートルの大木はない。そんな大木があったら、自分の体重を支えきれずに倒壊してしまうだろう。植物は日々成長していくが、無限に成長していくわけではない。大きな木も小さな木も、花も雑草も、当たり前のように生きている。そういう営みの結果として、森が存在する。変化しつつ変わらない姿は安定した社会を思い浮かべる。
10年前に出した「暇つぶしの時代」(平凡社)という書籍の中に「モノヅクリからコトヅクリの時代へ」という文章を書いた。戦後社会は、戦争で失われた物資の生産を求めてきたが、次の時代のテーマは、戦後社会の中で失われた「関係」や「地域」というコトを復元していくことだ。僕は、その本に書いたことを実践すべく、それからの10年を費やし、その体験の中で発見したことを、「森を見る力」(晶文社)という書籍にまとめた。
樹木はモノだが、森という全体像はコトである。モノとコトで僕らの秩序は形成される。商品も、メディアも、アートも、具体的な事象も大切だが、全体的な認識も大切である。僕らは、もう自分のことだけで精一杯の「子どもの時代」を終えて、全体を見回すことの出来る「新しい大人」のたたずまいを求められているのだと思う。
これからの時代は本という作品(モノ)を出すだけではなく、その本によって何かしらのムーブメント(コト)が発生しないと時代的な価値はないのではないか。そんな思いで、「森を見る力」の出版パーティを行いました。